札幌に出張に来ている。
ヤナギハラさんとかあと数人で。
昼食はとこかのビルの最上階でフランス料理を食べることになった。
店頭に並んだ料理のサンプルを眺める。どれも美味しそうだが、昼間っからそんなにこってりしたものを食べる気分ではない。
店のオーナーは品のよい婦人で、フランス語で何か話しかけてきた。
店頭で注文をとるシステムらしい。
ヤナギハラさんが流暢なフランス語で、並んだ料理のサンプルを指差しながら注文している。
ヤバい、フランス語で注文しなきゃいけないっぽい。
ヤナギハラさんがなにいってるのかさっぱりわからなかったけど、みんなの分も一編に頼んでてくれますように...と心のなかで祈りながら、隣で尤もらしくうなずき続けた。
ヤナギハラさんが話終わって店のなかに入って言ったので私も何食わぬ顔でついていこうとするが、オーナーに止められた。
絶望的。
やっぱり自分の分は自分で注文するのか。
とりあえず、なにがなんだかわからないけど、ヤナギハラさんがさっき料理を指差すときに「コッ、コッ」て発音してた気がしたので、私も料理を指差して「コッコッ」って言ってみた。
コッコッって何回か繰り返しているウチに、フランス婦人は小さく頷いていってしまった。
通じたのかなんなのか、自分が何を注文したのかなにも注文してないのかよくわからなかったけど、とにかくその場をしのいだことに安堵して、私は店のなかに入った。
通りすがりに先ほどのフランス婦人がいて
「もう『コレお願いします』は、もううんざりやねん」
と満足そうにつぶやいた。
私は、日本語しゃべれるのかよっと思うより先に、関西弁かよって心のなかで突っ込んでいた。
店の中には4、5卓のテーブル席がしつらえてあったが、客は私たち以外にはおらず、全員別々のテーブルに座った。
席が離れているので大声で話さなければならない。
がらんとした店内に私たちの声が響いた。
話題はブランド品を買うとついてくるオマケの品のことだった。
ヤナギハラさんが、サボールとかザニールの非売品は欲しくて我慢できない、この前同じビルの人が自分のほしいと思っていた非売品を身に付けていて死ぬほど悔しかった、などと言っていたが、私にはなんのことだかちんぷんかんぷんだったので、そっと、漂白されたような顔で息を潜めていた。
が、ヤナギハラさんはかまわず話続け、私の目の前にピンクのプラスチックボトルを突きつけてきた。
なんでも、それも有名ブランドの非売品だとかで、化粧品の一種らしい。
あまりにもどうでもよかったし、なんか自分の肌が汚いことを暗に指摘されている気がして、ちょっとムッとした。
とにかくその場から逃げ出したい一心で、お手洗いに向かうことにした。
店員か誰かに、お手洗いの場所を聞かなきゃならないけれど、またフランス語なんだろうか。
と、憂鬱になりながらフランス語っぽく
「トゥアレッ」
と呟いているところで眼が覚めた。
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