2025年5月6日火曜日

報酬と懲罰

職場の男性に偽装結婚を持ち掛けられた。
報酬を尋ねたら45万円とのこと。非常な大金と思われたので、ついついほくそえんでしまった。
後日、会社にお米スナックが大量に届いた。45万円分。社内で私と男性の間のよからぬたくらみが露見してしまった。
私は、45万円て、現金じゃなくてお米スナックかよ...って落胆したし、そのお米スナックさえ私の手には入らなかった。

会社からの処分としては、私はカーテン・バックに部署移動ということになった。

男性はおとがめなしとのことで、なんだか理不尽な気がした。男性の提案を聴いただけで、まだ何かを実行したわけでも、報酬を受け取ったわけでもない私だけがペナルティーを受けるなんて、納得がいかない。

カーテン・バックのお仕事は、カーテンで仕切られた個室に座って、電話やカーテン越しに、人々の悩みをきいたり、会社の仕組みを調整する仕事とのことだった。対面で相談に来る人にも対応しなければならないため、リモートワークでは行えず、毎日オフィスのカーテン個室に出社しなければいけないわずらわしさを除けば、かなり面白そうな仕事で、自分だけペナルティーを受けるのが納得いかないはずなのに、ワクワクしてしまっている自分がいるのだった。

部署移動が決まった日、このもやもやを晴らすべく、会社帰りにライブハウスにいった。しかしライブはすでに終わっていて、DJがガンガン大音量を流すパーティータイムが始まっていた。私がとにかく酒をあおっていたら「お久しぶりです」と声をかけられた。ハイビスカス江みたいな雰囲気の女性で、顔は見覚えがあるが、どこで話したことがあるのか全く思い出せない。思い出せないまま私は「あらら、どーもお久しぶりです」と話を合わせた。
私の隣にいた人が、囁き声で「○○のライブによく来ていた人じゃない?」と教えてくれたけれども、そのライブはたしかに自分もよく行っていたライブだったけれども、それでも彼女のことは全く思い出せなかった。思い出せなかったけれども、DJパーティーのさなかだったので、勢いと流れだけでどうにかなった。

ライブハウスを出て三々五々に解散したが、私鉄や地下鉄の終電が終わっていて、やむなくもとのライブハウスに戻ってきたら、解散したほかの面々も、同じく終電に間に合わなかったらしく青い顔をして元の場所に戻ってきていた。
「JRならまだ動いてるんじゃない?」
と誰かが言った。時計を見ると、確かにまだJRはやっている時間だったが、ライブハウスから最寄りのJRの駅は徒歩で40分ほど離れていて間に合いそうもない。
私はタクシーを拾うことにした。最悪、家までタクシーで帰っても、朝帰りになってしまって、それが会社いバレるよりはましだと思った。

いつの間にか外は土砂降り。通りに出てタクシーをつかまえるのは絶望的だったので、スマホでタクシーを2台手配することにした。
が、スマホで「タクシー」の4文字を打つことがなかなかできない。誤変換されたりご入力したり。焦れば焦るほどおかしな予測変換に邪魔されて、どんどん時間が過ぎていく。

2025年5月4日日曜日

手羽先の骨

真っ白なラボのようなところで事務仕事をしていた。

真っ白な棚の下、足元から4つ壁ぐるりと蛍光灯の照明で照らされていて、白いすりガラスでできた床もぼんやりと発光している。白衣のスタッフはみな下から照らされているせいか、陰鬱な表情に見えたが、淡々と作業を進めていた。

白い引き出しからプラスチックのファイルケースに挟まる形で大量の手羽先の骨が出てきた。目に入った瞬間、やったのはあいつだ、あいつが放置していたんだと思い当たった。しかしもうラボをやめてしまっているあいつを悪者にするのもばかばかしいので、誰にも何も申し開きすることもなく、黙って後始末をした。

見ていただれも、何も言わなかったし、私を責める者もなかった。蛍光灯に照らされた暗いシルエットだけだった手羽先の骨は、持ち上げると、私の手の中で色と奥行きと質感を取り戻すのだった。

不思議と手はあまり汚れなかった。