打ち合わせが終わると、今日集まる場所を提供してくれた女の人(アキコだったかアイコだったか忘れたけどおかっぱあたまの優しそうな人だった)が、
「ごはん食べてく?」
と言ってくれた。
私は彼女が兼業で定食屋もやっていると知っていて、前に一度食べに来たこともあったので、彼女の飯はひどく旨い、とみんなに教えた。
みんながどうしようかな~みたいな雰囲気でうろうろしていると彼女は
「じゃ急いでお弁当作るよ」
と言ってくれた。
私は、え、今から作るのか。待つのめんどくさいな~と思った。
サイテーですね。
彼女の飯を待つ間、私たちは家の奥を見学した。彼女はとても広い家に住んでいて、奥にはいくつも部屋があった。
彼女は捨てられた動物とか放っておけないタイプで、奥の部屋は彼女に拾われた生き物で一杯だった。
私はピンクときいろのシマシマの、ティガーみたいなフォルムの仔猫がお気に入りで、
「お前大きくなったな~」
とか言って、仔猫を頭に乗っけて歩いた。
仔猫は
フーッ
って怒ったけど背中を丸めて怒った体の形がちょうど私の頭の形にあってておあつらえな帽子みたいだった。
私は、奥の部屋にも入ったことあったので得意になってみんなを案内した。
奥にはいろいろな生き物がいたけど、一番多い生き物は人間だった。
人間達は水槽に入ったベッドに寝ていた。水中で、息ができないように見えるけど、そこかしこからいびきが聞こえる。
みんな、腰についたチューブを通してちゃんと呼吸しているのだ。
ベッドにはいろいろな人達が寝ていた。
手前のじいさん(か、ばあさん)と孫息子は寝顔までそっくり。
その奥のベッドには三人親子が眠っている。真ん中で眠る、小学生くらいの小太りの男の子を両側から抱き締めるように眠る両親。三人とも少し苦しそうだ。
両親の寝相は線対称に動く。
一番奥の夫婦は結構な恒例で、誰もが羨むなかむつまじさなのに、なぜか寝るときは、お互いに上下逆さまになって眠るだよね~
と、私は、訳知りがおでみんなに説明した。みんな感心している。
ここにいる人たちって存在じたいを語るだけでもかなり面白いストーリーになるんだよね~
と私がいうと、みんなもうんうんうなずいた。
すっかりいい気になっていると、一番奥の夫婦の、旦那さんの方が起き出してきた。
寝ているときは気づかなかったけど、起きてブンブンワメいている声を聞いて、彼がエイちゃんであることに、初めて気づいた。
エイちゃんは黄金のギターをかきむしりながら、音圧が足りないというような文句を言っていた。
けど実際にはギターからはバッツバツのめちゃくちゃいい音が出ている。
めちゃくちゃいい音じゃないっすか!
と、私が言うと、エイちゃんは、
「アンプがなきゃ話んなんねぇよアンプがなきゃあ...」
と毒づいた。
言われてみれば、確かにギターはアンプに繋がっていない。
アンプに繋がっていないのにこんないい音出るのか!
さすがエイちゃんはやっぱすげえ!
と思った。
あの部屋に、一人で寝ているベッドは一つもなかったなあ、って、目覚めてから思った。