2012年1月22日日曜日

同居人

文具屋の奥に扉があって、そのまた奥に私の住む部屋があった。
チェーンの文具屋の方ではなくて、小さな文具屋の方。
ファイルとかが置いてあるコーナーの奥にある扉。
灰水色の重い扉。

廊下を抜けて、部屋の鍵を開けると、中から壮年の長髪男が出てきた。
彼は私に軽く会釈してどこかへ行ってしまった。
気がつくと背後にお父さんが立っていた。
お父さんに
「今の、誰?」
と聞くと
「おまえの同居人だろ」
と返ってきた。

彼は私が外出している時にここで寝起きし、私が寝起きしている時には外出しているとのことだ。
生活時間が重ならない同居人というわけだ。
私は、そうだったのか、と思った。
最近、帰宅すると、出ていった時より布団がきれいにベッドメイキングされているような気がして不思議だったのだ。
彼がやっていたのだ。
同居人は几帳面な人なんだな、と思った。

お父さんは、若者たちをひきつれていた。
学生か、社会に出たてのなまっちょろい男たちだ。
中でも背がひょろっと高くて、目が細くてくるくるパーマの若者がよくしゃべっていた。
彼は近所のブックオフの店員なんだそうだ。
「近所って?」
と聞くと、
「西五反田ですよ」
と笑った。
その笑い方と言い草は、西五反田に決まってるじゃないか、他にどこがあるんだ、という感じだった。
くるくるパーマは、くるくる過ぎて、むしろわしゃわしゃだった。

部屋の隅の方に置いてあったバッグを手に取ってみた。
白いエナメル素材で、赤いステッチのあるスポーツバッグ風のおしゃれバッグ。
アメフトのボールを入れるのに丁度いい、よくあるあの形だ。
ジッパーのところが裂けて壊れている。

お父さんが、
「それ、手作り?」
と聞いてきたので、
「それはないでしょ、アメリカ製でしょ」
と答えた。
だって、バッグの前面には、いかにもアメリカっぽいウサギのイラストがプリントされている。
「いや、アメリカじゃないんじゃない?」
とお父さんが指差した。
お父さんが指差した裏面には、カラーの、日本アニメ風のイラストがプリントされていた。
明らかにゲゲゲのパクリイラストだったので、確かにアメリカ製ではないか、と思った。

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