2012年1月30日月曜日

余りに猟奇的な

スポセンあたりまでいくと雨がぱらついてきたので、諦めて家に戻った。

誰かがずぶ濡れになって帰ってきて、
『濡れなかった?』
と聞いたので首を横に振った。

裏庭は秋の林が黄金色に包まれていた。積もった落ち葉が柔らかい。
私達は夕飯の為に獣を屠ることにした。
鹿は簡単に捌けた。
まるで始めから、そういう風に捌けるように継ぎ合わせられていたみたいに簡単だった。
次は猪。
私は手斧を猪の頚に振り下ろした。鈍い音がして猪の第一脛椎が砕けた。
毛皮が裂けて、炎のように燃えたぎる血潮が見えた。
もう一度同じ場所に手斧を下ろしたけれど、それ以上刃が食い込むことはなかった。
手負いの猪は、ドタドタとベランダから家の中に駆け込み、居間を抜けて玄関に向かった。

丁度帰ってきた父が、玄関で鉢合わせた猪に
『イック、ただいま』
と呼び掛けた。
私は焦って
『食べる獣に名前つけないで』
と喚いた。
すると声に驚いた猪が振り向いた。
振り向いた猪はイックの顔で私を見上げていた。
『だから言ったのに』
私は声を絞りだしながら、あとずさる。
イックの上目使いに絶望的な気分が打ち寄せる。
捻れた頚の後ろ側で血が、ごうごうと燃えさかるのが見える。

2012年1月28日土曜日

でんでんガール

『でんでん』はでんでん虫のこと。
メルモちゃんのようなミニスカートをはいた後ろ姿。腰を付き出して振り返った頭にはガスマスク。開いた左手を口許に添えている三人組。
彼女達こそ、でんでんガール

起き抜け、なんじゃそりゃって憤った割りには、どんな夢だったか全然覚えてない。

2012年1月27日金曜日

もしくは差し入れ

ナッちゃんが肉の燻製をくれた。
真空パックのやつ。
トリの丸焼きの。
封が開いてて、半分無くなってた。
お土産、昨日も貰ったから、私はいいよって、みんなにあげて、って言ったんだけど、ナッちゃんは、これ、封開いちゃってるから、お土産なんてものじゃないから、って。でも凄く美味しいんです!って。
ナッちゃん...あんた夢の中でまで本当にいい子だなあ。

目覚めて思ったこと。
トリの丸焼きを更に燻す必要性。

2012年1月26日木曜日

この地で暮らすわけ

マイクがどうして遠い国を離れて、この地で暮らしているかというと、そこの、ドイツ人の双子の男の子達についてきたんだって。
愛する女の人の為ってのはよく聞くけど、友の為って珍しいよね。
マイクってもう30位だよね?そのドイツ人の子供達とどうしてそんなに仲良くなったんだろうね。
それが今じゃあ、海も時差も越えて、共にこの地で暮らしてんだよね。不思議だね。

2012年1月22日日曜日

同居人

文具屋の奥に扉があって、そのまた奥に私の住む部屋があった。
チェーンの文具屋の方ではなくて、小さな文具屋の方。
ファイルとかが置いてあるコーナーの奥にある扉。
灰水色の重い扉。

廊下を抜けて、部屋の鍵を開けると、中から壮年の長髪男が出てきた。
彼は私に軽く会釈してどこかへ行ってしまった。
気がつくと背後にお父さんが立っていた。
お父さんに
「今の、誰?」
と聞くと
「おまえの同居人だろ」
と返ってきた。

彼は私が外出している時にここで寝起きし、私が寝起きしている時には外出しているとのことだ。
生活時間が重ならない同居人というわけだ。
私は、そうだったのか、と思った。
最近、帰宅すると、出ていった時より布団がきれいにベッドメイキングされているような気がして不思議だったのだ。
彼がやっていたのだ。
同居人は几帳面な人なんだな、と思った。

お父さんは、若者たちをひきつれていた。
学生か、社会に出たてのなまっちょろい男たちだ。
中でも背がひょろっと高くて、目が細くてくるくるパーマの若者がよくしゃべっていた。
彼は近所のブックオフの店員なんだそうだ。
「近所って?」
と聞くと、
「西五反田ですよ」
と笑った。
その笑い方と言い草は、西五反田に決まってるじゃないか、他にどこがあるんだ、という感じだった。
くるくるパーマは、くるくる過ぎて、むしろわしゃわしゃだった。

部屋の隅の方に置いてあったバッグを手に取ってみた。
白いエナメル素材で、赤いステッチのあるスポーツバッグ風のおしゃれバッグ。
アメフトのボールを入れるのに丁度いい、よくあるあの形だ。
ジッパーのところが裂けて壊れている。

お父さんが、
「それ、手作り?」
と聞いてきたので、
「それはないでしょ、アメリカ製でしょ」
と答えた。
だって、バッグの前面には、いかにもアメリカっぽいウサギのイラストがプリントされている。
「いや、アメリカじゃないんじゃない?」
とお父さんが指差した。
お父さんが指差した裏面には、カラーの、日本アニメ風のイラストがプリントされていた。
明らかにゲゲゲのパクリイラストだったので、確かにアメリカ製ではないか、と思った。

2012年1月10日火曜日

googleユーポート

学祭かなにかの出し物を見るために講堂のようなところに集まっていく。
椅子は映画館のように折り畳み式のふかふか椅子、席は緩やかに傾斜しており後ろの席までしっかり舞台が見える。

私は一番前の席に座り、隣の席の人と、一番よく使うgoogleサービスは何か、話を弾ませている。

私がgoogleマップが一番だと声高に説いていると、斜め後ろの席から
「googleユーポートが便利ですよ。」
という声が聞こえた。
振り返ると、後輩の女子が控えめに微笑んでいた。
「googleユーポート?」
私は「ってなに?」というより、「なんて使う?」というニュアンスで聞き返した。
ようするに知ったかぶろうとしたわけだが、後輩の女子は普通に説明した。
「googleユーポートっていうのは、google体内検索のことですよ。病気とか、見つけてくれるあれです。」
私の隣に座っていた子が、その説明を受けて
「あー、あれね。」
とうなずいた。あれ、便利だよね、見たいな顔して笑っている。
私はそんなgoogleのサービス知らなかったので面白くなくて、
「え、そんなの使う?」
みたいな感じで反論した。
後輩の女子は私の敵意には気づかない様子で続ける。
「結構便利ですよ。この前も、私目から体内に虫が入っちゃったんですけど、googleユーポートですぐ見つかりました。」
後輩の女子の話を聞いて、確かに便利そう…と思ったものの、やはりそう認めるのは悔しいので、
「私、健康とか興味ないし。」
と、捨て台詞を吐いてその場を立ち去った。

端の席に座りなおすと、隣に部長が座っていて、
「あれ、一列目の人は健康診断受けるんだよ。受けるの?」
と尋ねてきた。
私はむっとしながら
「受けません」
と言って、一番後ろの席に移動することにした。

出し物が始まった。
一番最初の男子ボーカルユニットは非常に好評で、会場が熱気に包まれた。
二番手は男女混合ダンスボーカルチームだったけど、いまいち盛り上がらなくてどんどん人が席を立った。
私はなんだかかわいそうに思って、退屈でも座り続けたけど、彼らは人力でフェードアウトしていき、いつの間にかどこかへ行ってしまった。

開場を見渡すと、もう、私と私の友達以外誰もいなくなっていた。

2012年1月8日日曜日

からくりの向こうの休息

戦から逃れるために、城の抜け穴に潜りこんだ。
煙突のように細い抜け穴を、木登りするみたいに登っていく。
一番上に突き当たると、小窓のようなものがある。なんとか手が届きそうなので、手足を目一杯突っ張って、小窓を押すと、下がからくり扉になっていて、壁がガバっとひっくり返り、私は壁の向こう側に転がりこんだ。

転がりこんだ部屋は、城の本丸近くに当たるはずなのに、わりと洋風で、壁が白い。
洋風、と思ったのは、突然転がりこんできた私の顔を覗く面々の幾人かが、洋服をきていたからというのもある。

洋服のうち一人は明治辺りに流行ったような、わりかし動きやすいドレスを着ていて、姫さまと呼ばれている。
日本語が話せないようで、洋服を着た男に通訳させている。
彼女の言葉は聞き覚えの無い音だったが、なんとなくヘブライ語のような気がした。

通訳の男も決して日本語が達者なわけではなく、片言で一生懸命私に話しかけてきた。

二人の他はみんな着物の女の人で、日本語が話せそうなのに自発的に言葉を発しない。主に絶対服従なのかもしれない。

ここは大奥なのかもしれない。

私は紅茶と御菓子をふるまわれ、さっきまでの戦の喧騒が嘘のように思えるほど平穏な時間を過ごした。

そのあと、憲兵隊が乗り込んできてひと悶着起きたけどよく覚えていない。

2012年1月7日土曜日

駅前ロータリー

実家の子供部屋。
今は末の弟が使っている。
弟とその友達が、カードゲームに興じるのを尻目に、私は棚の中を物色する。
奥に、風呂敷包みがある。
無性に懐かしい気がして開けてみると、単管の連結に使うような部品となにか黒いかけらが入っていた。
ああ、これか、そんなことあったな、と思った。
どんなことがあったかは思い出せない。
弟の友達は顔が見えない。私も顔を見られたくない。

******

月寒中央公園駅に、大森駅前のロータリーがあって、時は夜。
ベンチに大きな荷物とベビーカーがあって、赤ちゃんが乗っている。
大人の姿は見当たらない。

母親はどこだろう、と思っていると、両脇を警官がすり抜けていった。さっき向こうで聴こえた怒鳴り声のせいかもしれない。
警官の一人二人が公衆トイレに駆け込んだ。さっき聴こえた悲鳴が原因かもしれない。

******

地下に続く階段を降りると、暖かい部屋。
ミーみたいな髪型の女の人が微笑んでいる。彼女が例のリコーダ奏者だ。
そうなるともう一人は何の奏者なんだろう。
ユニット名に聞き覚えあり。
週末狸小路で、演奏会があるからと誘われたけど、その頃はもう東京に戻るので、と断るしかなかった。

2012年1月4日水曜日

好きだった男の子

柵の向こうを見やると、みんなが白い湖でなにかを捜索していた。
走りよってみると、ヨコヤマ君が飛び込むのが見えた。
次の瞬間、
「溺れてるぞ!」
という叫び声が聞こえて、私は彼のことだと思い、慌てて飛び込んだ。
湖はマシュマロキャンディがとけて出来たものらしく、甘くて、髪がベトベトになった。

彼を、Mootekkisのファンのフミちゃんと二人がかりで助けあげた。

それから三人で何か食べにいくことにした。石焼きビビンバ屋とプルコギ屋とトッポギ屋とチゲ屋があって、私達はチゲ屋に入った。
フミちゃんが体脂肪率を気にしていて、メニューに悩んでいたら、タカちゃんが私に
「お前も気にした方がいんじゃねえの?」
と言われた。いつの間にかヨコヤマ君がタカちゃんに変わっていた。
子供の頃はわりとポッチャリだったタカちゃんが、すっかりスマートになって、爽やかに笑っていた。
フミちゃんはチゲのつけあわせをチヂミにして、更に焼きそばを付けるか迷っていた。
私はハンゲタンにした。

この夢でおもしろいのはタカちゃんとヨコヤマ君が入れ替わるところだ。タカちゃんは小学校のとき、ヨコヤマ君は中学校のとき片想いしていた。
夢のなかでは、昔好きだった男の子はいっしょくたになって、同一人格として現れたりするんだね。

2012年1月3日火曜日

フラグメント

証言
気になるあの人
集まり
畦道
多言語好き
捜査課ライバル班
紙にこびりついた餅を洗い落とすにはぬるま湯に浸けてゆっくりやる必要があるから、帰ったら私がやる、と、カナちゃんに説明
私の推理
気になるあの人の推理
私の見たもの
あの人の見たもの

2012年1月2日月曜日

迎春

職場にたどり着くと、前を歩いていたサラリーマンが丁度エレベーターに乗ったところだったので、私も慌てて滑り込んだ。

乗ったエレベーターは、いつものではなくて、第3のエレベーターで、私の会社の階には留まらないようだ。
え、聞いてないよ、と思ったけど、先に乗っていたサラリーマンの手前、なにくわぬ顔でいたら、彼はは先に降りてしまった。

彼が降りているときに気付いたことには、この第3のエレベーターは、扉の開け閉めにカードキーが必要なようだった。

幸い、カードキーは持ち合わせていたので、近間の階で降りることにして、キーをスリットに差し込んだ。

ところがカードキーは自分の階でしか有効でないらしく、エラーのビープ音が鳴りだした。
コンピュータ部分からは一生懸命何かを計算する音が聞こえる。
どうしよう。出られない。
私は半パニックを起こしながら、カードキーをガシャガシャ動かし、無意味にあたりを見回した。

すると、左側の壁が無いことに気付いた。壁の代わりに廊下が続いている。

焦ってカードキーをガシャガシャやってたのが馬鹿馬鹿しいくらい呆気なく外に出た。

エレベーターの一件はそれで解決と決め込んで、何食わぬ顔で仕事していると、専務に呼ばれた。
専務はかなり険しい顔をしている。
彼は社内全体のデータベースを管理していて、私が担当したプロジェクトのデータを指差した。
「何このデータ?おかしいんじゃない?フリーズしてるんだけど」

私の顔から血の気が引いた。専務のパソコンで見る限り、私のデータはウィルスに感染しているか、誰かにハッキングされたあとのように見えた。原因として考えられるのは、朝のエレベーターしかない。
きっと、カードキーからデータベースに侵入されたのだ。
大変なことになった。
情報の漏洩は自社の存続どころか、顧客の存亡にも関わる。

情報漏洩に関する予想を聞くだに、専務の表情が真っ黒になる。
私は恐怖のため、目を合わすこともできず、
「詳しく調べてきます」
と言いおいて、自分の席へ逃げ帰った。

生きた心地もしないまま、自分のマシンでデータを点検する。

と、指摘された箇所のデータだけ、圧縮フォーマットが違っているのに気がついた。
いつもはzipで圧縮するのだが、件のデータ群はcold sleepで圧縮してあるのだ。

私は思い出した。
そのプロジェクトは大きくて、zipで圧縮した場合、データサイズがデータベース内で各プロジェクトに与えられる規定のサイズを若干上回ってしまう。
そこで、より圧縮率の高いcold sleepを使用したのだった。

専務のパソコンにはcold sleepを解凍できるアプリケーションが入っていなかったので、データがフリーズしているように見えただけだったのだ。

情報漏洩が起きたわけではなかったとわかり、凍りついていた私の背筋が急激に雪解けを迎えるのを感じた。

訪れた暖かさに眠気を誘われながら、春だ、と思った。