富士山のような霊山に登って、てっぺんでライブをやった。
私たちは高校生だった。
部活だった。
マッチさんがギター兼ボーカルで、多分、部長。
私もタメで、他にタメには、この国の王子がいた。
私たちは、同じ『山を登る』という苦難を体験することで、世間知らずな王子が少しでも成長してくれればいい、なんて、偽善的なことを考えていた。
下界に帰って来てから、王子に
「どうだった?」
と聞くと、
「なにが?」
という無感動な反応がかえってきた。
「一緒に、白い沼を渡ったじゃん!霧のなか進んだじゃん。てっぺんで思いきり音鳴らしたじゃん!!」
「はあ...」
そんなことあったっけ?って感じで王子は生返事をして、自分のとばりに入りこんでしまった。
なんかショックだった。
それからマッチさんと後輩の男子生徒と、あと女子もう1人と、4人で蕎麦屋に行った。
後輩の男子生徒は平成ノブシコブシの吉村でベース担当だった。
女子の方は、前日テレビで見かけた、AKBの誰だかに似ていると評判の、テニス部の女子だった。
他の部員たちに黙って4人だけで蕎麦屋に来るのは、なんか抜け駆けしてるみたいでどきどきした。
後ろめたいけど、その何倍も楽しい感じ。
蕎麦を食べていると、同じ部の女子達がぞろぞろとやって来た。
彼女達は、私たち4人には気づかず、女子のドロドロした感じのトークバトルを繰り広げた。
その壮絶な様子に、関係ない私まで胃が痛くなった。
暫くして気づくと、蕎麦屋からは出ていて、学校にいた。
後輩の男子が何人か、血相変えて教室に入ってきて、マッチさんが、いったいどうしたのかと訪ねると、髪をツンツンにたてた男子が、
「大変です!ベースが、やめるって言ってます!!」
と、まくしたてた。
「え、ベースって、どのベース?」
と私が聞くと、別の後輩が
「ベースって言ったら一人しかいないじゃないですか!」
と、避難がましく言い立てた。
私は、え、ベースっていったら、ヒゲ?
HiGEのベース止めるの?と、一瞬ちまよったが、すぐに、平成ノブシコブシのことだと思い当たった。
「なんでまた急に...」
マッチさんが呟く。
後輩たちの言によると、ノブシコブシは人間関係に疲れてしまったらしかった。
私はすぐに、それが蕎麦屋の一件のせいだと気づいた。女子達の血で血を洗う攻防を目の当たりにしてしまった後では無理もない。
でも、ノブシコブシ本人には関係ないのに...
と思っているところで目が覚めた。
登山後山頂でライブって...なに部だったんだろう。
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