2020年2月24日月曜日

砂利を踏む音

また殺される夢をみた。

すごくすごく好きな人と、思いが通じた、みたいな始まり方だった。
坂の上の建物の陰でキスをして、それから相手がアイスクリームを食べようといった。
私はアイスクリームなんかどうでもよかったけど、彼が嬉しそうならそれでよいと思った。

二人で坂の上のコンビニに行った。
そこのコンビニでは特別なソフトクリームだかクレープだかが売られていて、これがおいしいんだよと、彼が教えてくれた。私たちはそれを買って店を出た。

店を出たところで殺し屋たちに見つかった。

私たちがどうして追われているのかはよくわからなかったけど、とにかく殺し屋たちはジェイソンみたいな狂人でもなく、個人的なうらみを晴らそうとしているのでもなく、なんらかの組織の決定に従って私たちを殺そうとしていた。その組織がどれほどの大きさの組織なのかわからず、警察に助けを求められる状況なのかは定かではなかった。

夕暮れの住宅街で、彼らはためらいなく発砲してきた。
私たちはとにかく走って逃げた。
この前の夢と違って、私たちはごく普通の一般市民で、殺し屋から殺されそうになったことなんか今まで無くて、気が動転してその場で動けなくなってもおかしくない状態だったけど、我を忘れそうな状態だったけれど、彼は私を見捨てなかったし、私も必死で彼についていった。

なんとか路地に逃げ込んで、彼らの視界から外れることに成功した。
ここで彼らを撒けるかどうかは、今この時の決断にかかっている。
路地にはごく一般的な一軒家が並んでいる。どの家も自家用車がとまっていて、ブロック塀の中には小さな植木を置ける程度の庭。
私たちは一番左の家の駐車場に逃げ込んだ。その家は駐車場が他の家より少しだけ大きく、砂利が敷いてあって、駐車場と裏庭の間が高い金網で仕切られていた。裏には草原になっていて、草は短く刈り込まれていたが花などは植えられていなかった。
私たちは金網とブロック塀の隙間に身を潜めようとしていた。
すると、砂利を踏む音がして、着物を着たおじいさんがやってきて私たちを見つけた。
ここの家主らしい。傷だらけの私たちを見て慌てて駆け寄ってきた。

「どうしたんだ」
言われて、涙がにじむ。
私たちは、助けてくださいだとか、かくまってくださいとか、なにかそんなことを言ったと思う。そこへまた、砂利を踏む音が聞こえた。
今度は複数の足音だ。

反射的に私たちはブロック塀の陰に隠れた。
ブロック塀の隙間から、殺し屋たちがやってくるのが見えた。
殺し屋たちが、着物のおじいさんと親し気に挨拶をかわすのが見えた。

「そこに逃げ込んでいるよ」
おじいさんがこちらを指さすのが見えた。

殺し屋がブロック塀の裏側に回り込んできて、4、5メートルのところから私たちを打った。最初の弾は彼に当たった。すぐに私にもあたったので、彼が死んだかどうかわからなかった。

目が覚めたので、私が死んだのかどうかも、よくわからなかった。
目覚めたとき、あまり恐怖は感じていなくて、ただとても悲しかった。
それから、砂利を踏む音は好きだなと思った。

2020年2月22日土曜日

明晰夢

目覚めると妹がこちらをのぞき込んでいた。
部屋中が薄青い。朝方なのだろうか。

妹は、長く緩いドレッドをピンクとライトブルーに染めていた。カーテンも壁中に張られたポスターもすべてピンクとライトブルーの色味のものにそろえられ、部屋仕切りに垂れたすだれもピンクとライトブルー。ビリーアイリッシュの信者みたいだ。

これは夢だと気づいた。
妹がビリーアイリッシュの信者なわけがない。
明晰夢だ。自分の夢の中なんだから、何もかも思い通りになる。
気づいたとたん、急に楽しくなって、体中の細胞が覚醒した。

私は二段ベッドから飛び降りて、外に出た。
外はもう明るかった。曇り空がまっ白い。
空も飛べるはず。
そう思って勢いよくジャンプしたら、思った通り飛ぶことができた。
体をグッとのけぞらせると高度が上がり、背中を丸めると高度が下がる。
街の中を飛び回る。
横断歩道の前に降りると、道路向かいのビルから黄色いモンスターの形をした巨大な風船が噴き出すのが見えた。飛び上がって風船に乗っかったりして遊んだ。

他にもいろいろ見たりやったりしたと思うけど忘れてしまった。

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目が覚めてからも、少しの間「明晰夢」を見たということに興奮していた。
初めてみたかもしれない。そう思って少しの間思いを巡らしているうちにだんだん気持ちが冷めてきた。
夢だとわかって、夢をみていることは今までにもあった。
夢から覚められない夢とか、まさにそうだ。それは明晰夢なんていいもんじゃなくて、単純に言って悪夢だった。
今回の夢をみている間、「夢の中の私」は確かに思い通り自由に空を飛んだりしていた。
けれども目が覚めて思うのは、あれが「夢をみていた私」のやりたかったことだったとは思えないということだ。私には、もっと他にやりたいことがあるし会いたい人がいるはずじゃないか?なのに、「夢の中の私」はただ脈絡もなく飛び回っていて、「夢をみている私」はただそれを映画みたいに見ていただけだった。これが本当に思い通りと言えるのだろうか。これが本当に、自分が夢をみている最中だと自覚していることだと言えるのだろうか。

明晰夢とは。

2020年2月14日金曜日

エピソードゼロ落ち

殺人鬼に追われている女と男。
二人の関係性については覚えていない。
芝生。
学校。

なんとか殺人鬼を撒こうと、二手に分かれる。
というか、成り行き上、別れてしまった。女をおいて、男は走る。殺人鬼はついてくる。女は助かったに違いない。

保育園。
老人ホーム。
公園。
子供たちが遊んでいる。
大人は人っ子一人見当たらない。
とにかく人混みに逃げこまなければ。
こっちは必死なのに、子どもたちがかくれんぼだと思ってか、殺人鬼に居場所をばらしてしまう。

奇声をあげて笑う子どもたち。
逃げる。
子どもたちに邪魔される。

なんとか路地を抜けて、人混みに逃げ込む。
人の間をすり抜けて走る。走る、走る。
交差点で左を見ると、一本向こうの通りから、バズーカでこちらを狙う殺人鬼と目が合う。

目の前の市電に飛びつく。

後方で爆発音。



それからも、たくさん人が死んだ気がする。

けれども夜にはなんとか逃げ切ることができたので、今夜の宿に戻ってきた。一階がカフェになっているホステル。
間接照明のカフェには甘い匂いが漂う。
コーヒー
ブランデー
ツヤのない小ぶりのチョコレートケーキ
物静かな店員たち。

いくつもの死をくぐり抜けて帰り着いたカフェの、えもいわれぬ安心感。

男は柔らかいソファに身を沈める。
実はこのカフェの店員たちがスパイ組織の人員で、これから一緒に戦うかけがえのない仲間になっていくとも知らずに。


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という、何かのスパイシリーズものの、エピソードゼロ的な終わり方だったな。こういう形式のストーリーって〇〇落ちみたいな言い方あるんだろうか。

久しぶりに殺されそうになる夢見たな。
チョコレートケーキはバレンタインからか。
戦隊もの特集番組を見たので夢に出たか。

冒頭、男が女と分かれるまでは俯瞰で夢を見ていて、三人称小説的に。けれど男一人になって必死で逃げている間は、男の視線で夢が進んで、一人称小説的に。で最後カフェからはナレーションが入りそうなほどの三人称小説的な視点に切り替わっていたような。この感じ、うまく書分けられないし、結局夢の中で自分が男だったのか、男を俯瞰で見ていたのかわからない。夢の不思議。

2020年2月2日日曜日

ジダさんとハリボテのクジラ

ジダさんが東京に遊びに来た。
私達は大喜びで、みんなに声を掛け合って、みんなを招集した。
けれどもあまりに急のことだったので、駆けつけられたのはNくんとマキシムだけけだった。
4人で近況を話し合った。ロシア関係の仕事をしているのは今ではモスクワ在住のマキシムだけだったので、ジダさんには申し訳ない気持ちがこみ上げたけれど、ジダさんは、みんなが元気に暮らしているだけでとても喜んでくれた。

時間がきて、ジダさんが帰るというのでエレベーターのところまで送っていった。書斎くらいの大きなエレベーターで、ジダさんがのってもぽつんとして見えるほどだった。扉が閉まりながら、下がっていくエレベーターの中で、ジダさんが手をふっていた。
私はなんだか、ジダさんに会えるのはこれが最後な気がして、悲しくなってしまい、こみ上げる涙をこらえながら力いっぱい手をふりかえした。

ジダさん!!!!!

…ジダさん!!!!!!




ジダさんが行ってしまってから、残った三人で河原の土手を歩いた。
雲の切れ間からハリボテのクジラが降りてきた。

ハリボテのクジラの中には不法投棄のゴミがみっしり詰まっていて、耐え難い悪臭を放っていた。

クジラの製造元は「マクファーリン製薬」となっていた。「マクファリン製薬」だったかもしれない。とにかく私達はこの製薬会社について調べなければいけないと思った。

というところで目が覚めた。
ぼんやりとした頭でスマホに手を伸ばし、マクファリン製薬を検索したけれど、そんな名称の会社は存在しないのだった。