遠く、丘の向こうに天狗の面が聳えたっている。
靄がかっているのか光化学スモッグなのかボンヤリとして見えるが、この辺では一番の名勝らしい。
だいたいこの街のどこからでもあれが見える。
少し傾いて見えるが、丘の地面が傾いているのでそう見えるだけなのかもしれないなのかもしれない。
ここから天狗のところまで行くには、民家を縫って坂道を登って行くか、すすきのはらを抜けて行くか。
白装束に身を包んだ連れが、たまにこちらを振り返りながら、随分前を歩いている。
すすきのはらに向かっているようだ。
ふと気をとられた隙に、連れを見失った。
独りであのすすきのはらを抜ける自信がないので、民家の坂道を登った。
天狗の面は、建物になっていて、右目の裏辺りに事務所があった。
事務所に入ると、泥棒にでも入られたみたいに散らかっていた。
夜逃げだ、と悟った。
天狗の目から外を眺めると、夜逃げ跡地に入る次の会社の人々らしい数人がワイワイとこちらに向かってくるのが見えた。
中国語を話しているようだ。
おそらく家族だ。
家族経営で、なにか大陸から仕入れた商品を通販で売るのだろうなと思った。
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