教育実習か何かのために、見知らぬ土地に来ていた。
建物内で、自分のお客様感を持て余している。
みんなで事務書類かなんかの作成をしているのだけど、私だけ先に終わってしまった。
こんな簡単な書類作るのに、みんななんでそんな時間かかってんだろう。
それとも、私だけお客様扱いされて、ちょっとしか仕事を割り当てられてないんだろうか。
とにかくその場に居づらい気がして外に出た。
止める人は誰もいない。
針葉樹林の間の坂道を降りて行く。
目覚めて今思い出せば、あれ、中学校の脇の、オビラルカに向かう坂だ。
ただし夢見ている最中はそんなこと気付かない。
それに、坂の向こうには大きな街が広がっているみたいだった。
大きな塔が目にとまったのでよく見てみると、巨大なパンジーだった。
巨大なヤシの木のような幹のてっぺんに、黄色く巨大なパンジーの花がトーテムポールのように数首、連なっていた。
パンジーと言えば、茎の短い植物だし、そもそもでかすぎる。
私は興奮してみんなのところに戻った。
ところが私がパンジーと騒いでも、みんな薄暗い顔色をするばかりだった。
だれひとりパンジーという花を知らないみたいだった。
辺りを見回すと、ドアのストッパーが割にプランターが置いてあって、そこに申し訳程度の、薄桃色のパンジーが、2、3、花をつけていた。私は、指差して、あれがパンジーだと主張したが、誰もそのことに興味がないみたいだった。
そして、責任者らしいオジサンが渋い顔をして言った。
「熊本に行ったらダメだよ」
なんのことかわからなくて、他の人の顔を見ると、
「あの坂の向こうが熊本との国境なんだよ。許可なく国境を超えたらダメなんだ」
と説明された。
私は、あ、そうか、ここ福岡だっけ…
と思い、知らずに法を犯してしまったことにしょんぼりとしてしまった。
誰かが
「まあ、知らなかったんだからしかないじゃないか」
みたいなことを言ってて、それにみんなも同調しているようだった。
大事にならなそうなことにホッとしつつ、相変わらずお客様扱いされている感じが嫌で腹が立った。
ここからでも見えるほどパンジーは巨大だった。
私はやるせない気持ちを抱えたまま、パンジーをカメラで撮影することにした。
ファインダー越しに見ると、巨大パンジーは、回旋塔か何かのように見えた。
しかも白黒で、まるで、森は生きているの1stのアルバムジャケットみたいな画に見えた。
ファインダー越しと肉眼で、何度も巨大パンジーを見比べた。
巨大パンジーは、今や大地に固定されているのではなく、大きな車のようなものに乗って移動しているようだった。
大きな車輪のついた無機質な物体。
神奈川の工場地帯で見かけるような、用途のわからない鉄の巨塊。
巨大パンジーはその巨塊の突端に伸びているのだった。