2012年12月4日火曜日

そのエレベータは独立している

人びとはそれを単に「エレベータ」と呼んでいた。

原っぱに立つそれは、近隣の建物に抜きん出て高く、5人がけくらいの長椅子がむき出しに取り付けられていて、ボタン操作で昇降できる。

降りたところにも昇ったところにも何あるわけでもなく、途中で降りられるわけでも、建物内に入れるわけでもない。

エレベータを利用する者は稀だった。
利用、と言っても、椅子に座って昇って降りるだけ。
エレベータはとても高いし原っぱは風もあって危ないばかりだ。

私は、このエレベータにのるが好きだったような気がして、その、禿げたベロアの席に座った。

誰もいないと思ったのに、三人のじじばばが乗り合わせた。
彼らは、悪いこと言わない、早く降りた方がいい、とかなんとかいいながら、動いているエレベータから横壁によじり降り、それぞれ何かしらの突起を見つけて器用にしがみついた。

セミのように壁に張り付いたじじばばを尻目に、私は上昇し続けた。

上にいくにつれ、風が強くなっていく。
私はほとんど、椅子にしがみついたような格好をして、強風に目を細めていたけれど、心はとても穏やかだった。

エレベータも穏やかに上昇し続けた。

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