ミーちゃんちに泊まった。
無断外泊でうしろめたかったけど、朝ミーちゃんが電話してくれた。
学校の帰りが夜12時過ぎてたから仕方なかったよね、という話になった。
そのままミーちゃんと学校に向かった。
木々の間を縫って坂道を下りきったところには大きな漁船が乗り上げており、その先にはどこまでも続きそうな干潟が見えていた。
手前を見るとぬかるんでドロドロだったけど、遠く地平は澄んで青空を映していた。
私たちはこの干潟を渡っていかなければならないのだけど、上手く地面の堅いところを探って歩かないと、ぬかるみにはまって沈んでしまう。
私は立ち止まって目の前の漁船を見上げた。
錆びて、蔦の這う、時の止まった船。
ミーちゃんは私に船の脇を歩くよう促して、軽やかに跳び上がり、へさきに腰かけた。
それから、艫に向かって船の縁を滑り降りて行った。
すると船の縁が擦れて、抜けるような美しい音が響いた。
グラスの縁を擦って音を出す楽器のような感じだった。胡弓の音色にも似ている。
そんな美しい音を当たり前のように作り出せるミーちゃんに、心の底で嫉妬した。
妙なる調べが空に伸びていくと、野生馬の群れが現れて、地平へと駆けていった。
颯爽と疾駆する馬達。
中にはぬかるみにからだの半分を沈めて、前足でもがいている馬も。
『みんなこの音から逃げようとするんだよ』
そういいながらミーちゃんは船から飛び降りた。
『走ってった馬の跡を行けば、ぬかるみに足をとられることはないでしょ』
音楽にうっとりしていた私は、更に感激して、干潟を渡る、素足のミーちゃんに続いた。
学校に着くと、スグルがミーちゃんに、あのメロディーのあの部分は、自分が作曲したのだ、と、主張していた。
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