出社したら今日から休みのはずのイさんがいた。「昨日仕事終わらなかった」と言って泣きそうな顔をしている。
アオキさんがやって来て
「あれ、返してもらえる?」
というようなことを言った。
私は何のこと言われてるか全然思い当たらなかったけど、何か借りてたような気もしなくもなくて、たじたじとしてしまった。
「何、借りてましたっけ?」
と、吃りながら聞き返すと、アオキさんは、「あれ、やっぱパクさんだっけな...」と呟きながら、右手を机の上に置いた。
その右手が水風船のように膨れていて尋常じゃない。
それで、これは夢だと気づいた。
これが夢と言うことは、つまり、私はまだ出社していないということだ。
出社してないということは遅刻してしまうということだ。
速やかにベッドから起き上がって会社にいかなけれはならない。
そう思ったとたん、ベッドの中の重い体か意識される。
重い体はびくともしない。
この重い体をロフトベッドから下ろせばきっと目が覚める。
渾身の気合いで体を引きずる。
片足がズルンとベッドから落ちる。
まったく力の入らない足がだらしなくブラブラと垂れ下がっているのを感じる。
あとすこし...このベッドから落ち出さえすれば...
もう片方の足もベッドからずり落ちる。
足の裏が何かのへりをとらえる。
ほら、もう少し、足を踏ん張って...
ふと、ぬくぬくと布団にくるまってベッドの中で丸くなっている自分を発見した。
目覚めた冬の朝はしんとしていた。