学生たちの喧騒を抜けて、図書館の片隅で、泡をモッコモコにたてながら、体を洗っていた。
円形の壁は一面のガラス張りで、外から丸見えだったろうけれども、誰もいないし何も思わなかった。
芝生の間を走る参道を、関さんが戻ってくるのが見えた。
「戻ってくる」と思ったからには、以前に関さんがここにいたことがあって、それから出ていったいきさつがあるはずだが、以前のことは何も思い出ない。
関さんは、窓辺の私には気づかないまま参道を渡りきり、奥の入り口から館内に入ってきた。
それからぐるっと回って私のいるところまでやって来て、やっと人がいることに気づいたようだった。
関さんが現れたとき、私は泡でモコモコながら、一応裸だったので、かがんで体を隠した。
恥ずかしかった、というよりは、ここで恥ずかしがらないような、恥知らずな人間だとは関さんにはバレたくないがために、体を隠した。
関さんは一瞬ポカンとしていたが、状況が飲み込めたのか、「あ、ごめんなさい」と言って本棚の向こうに隠れた。
私は関さんに図書館になにしに来たのかたずねた。
すると関さんは、小さな銀色の球体に鎖のついたものを差し出した。
鎖の部分に手をかけ、球体をぶら下げるように持っている。
球体はくるくると回っていたが、カチッと音をたてるかたてないかして、真ん中で稲妻型のひびが入り、それこから2つに割れた。
割れたなかには小さな球体が浮遊して回転していて、外側の球体はいくつもの直線や曲線で幾何学的に繋がっており、ゼンマイ時計の内側を覗いているような興奮 がそこにはあった。
それから関さんが空を指差すのでそちらを見た 。
そこには2Dの夜空が広がっていて、2Dの面に3Dに見えるように描いたかのような銀色の月がのぼっていた。
と、その月が、さっきの球体と全く同じ ように割れて中身が見えた。
内部の球体と幾何学的な構造が瞬く間に動いてトランスフォームしたあと、割れた月はカチッと音がするかしないかして、割れ目を閉じた。
幾何学的トランスフォームのあまりの神秘に絶句していると、関さんが、
「中野さんもあのバスに乗ればよかったのに」と言った。
私はあのバスに乗るはずだったこと、遅刻してしまったので乗るのを諦めたこと、あのバスの行き先が月だったことを思い出した。
「少し遅れて出発したから、たぶん中野さんも間に合ったのに..」
関さんにそういわれるととても悔しい気持ちになった。
関さんは鎖付きの球体を私に手渡し
「あげる」と言った。私は喉から手が出るほどそれがほしくなったが、もらっていいような代物ではないとわかっていたので口では断ったが、てはしまえなくて受け取ってしまった。
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昨日の夜、関さんのあだ名を考えながら寝たら夢に出た。
裸だの月だのは、昨日見た恥御殿のお色気むんむんなダンサーの、夢よりきらびやかな踊りに心奪われたのが夢に出たのでしょうか。
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