2013年6月22日土曜日

婆生誕祭

緑の原っぱを青山が囲む静かな場所。
黒のスーツを着た若者たちが、半円を描いて座っている。
人が多くて随分と大きな輪を作っているので、向こう側の人の顔もわからない。
上から見たら、蹄鉄のように見えるのかもしれない。

半円の、弧の真ん中に、ばあちゃんの座る席が用意されている。
ばあちゃんの誕生日を祝うために、これほど多くの親戚が集まってきているのだ。
こんなに親戚が集まるなんて、田舎ならではのことだ。
東京に帰ったら、みんなに自慢しよう。

ばあちゃんはまだ来ない。

黒スーツの群れが立ち上がり、フリをそろえて踊りだした。
あるいはアレは学ランだろうか。
足元には緑。
奥には山々。
音楽は、聴こえない。

振りつけは、全員バラバラで、一見思い思いに踊っているように見える。
けれどもしばらく見ていると、それらの振り付けには規則性があり、組織だてられた一連のうねりであり、統括されたものであることに気付く。
聴こえないはずの音楽が見えてくる。

手前の山から、鬼のような人が二人降りてきた。
中断される踊り。
鬼のような人の間に挟まれて、黒スーツの男が引きずられてくる。
彼も私たちの従兄らしい。

「あいつ、まだあんな連中と付き合ってるのか」
「親の代からだ、もう逃れられないんだろ」

そんな声が周りでささやかれる。
鬼に引きずられる男は、黒縁めがねのひ弱そうな青年で、顔は真っ青。
目には生気がない。

ばあちゃんの誕生日だというのに。
早くあの青年を、半円の中に入れなくては…

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