改札を出ると、ヒッキーがもう待っていた。
お約束であるかのように、二人、古い喫茶店に入って話をした。阿佐ヶ谷のGionみたいなところ。
コーヒーを飲み終わって店を出た。
しまった、お会計するの忘れた!と思って店に戻ろうとしたら、ヒッキーが出て来て、もうお会計したよと言った。
私は、結果的に、おごってもらうのが当たり前みたいなふるまいになってしまったのが恥ずかしく、気まずかった。
ヒッキーの表示も、なにか避難がましく曇っているように見えた。
そのあと、別の喫茶店に入った。
ヒッキーの行き付け。
店の前の茶席に誰かみたことある男が座っていた。誰なのかどうしても思い出せない。
私はその店の存在は知っていたけど、入るのは初めてだった。
今度は私が払います、と訴えたが、あえなく却下された。
店内には目の不自由なお客さんがいっぱいいた。
そうゆう方たちに人気だとの噂は聞いたこともなかったけど、そうなのかな?
目の不自由な人にも利用しやすい店なのかな。
あるいは、そういった方たちの情報交換の場所になっているのかも。
ヒッキーももう大分トシだし、目がもう全然見えなくなっているのかもしれない。
店を出たら、外に、誰だか思い出せない彼がまだ座っていた。
その後ヒッキーとは別れて、駅のコーヒー屋で女の先輩と会った。
駅ではお祭り囃子が聞こえていた。
子供達が笛をふきふき、単純なワッショイとは違う口上みたいなものをかけあっていた。
子供達はこのお祭りのために学校休んだのだろうか。そういえば、お祭り休暇というのが合った気がする。
私もこの後会社休みたい。
駅のコーヒー屋で、お祭りを眺めながらそんなことを思った。
私は、自分が書いた小説を女の先輩に渡してあったのだけど、彼女はそれは読んでいないようだった。
プロット(いつものようなファンタジーもの)を説明すると、「もっと現実ぽい話書けない?」と言ってきた。具体的にこんなプロット... というのも話してくれた。
地味な恋愛ネタだったけど、なんだか書いてみたいような、今なら書けるような気がしてきたので、次会う時迄に書いてくると話した。
彼女は、私がのって来ると思っていなかったらしく、意外そうに、怪訝そうにしていた。
お店の入り口に目をやると、トガシさんがいた。
びっくりして頭を下げると、トガシさんはレジをさし、「払っといたから」と言って去っていった。
あっという間の出来事だった。
それを話すと先輩もびっくりしておろおろしていた。
先輩に教えてもらった恋愛小説のプロットは、忘れてしまった。