心臓の検査で引っ掛かって、定期的に病院に通わなければならない。薬ももらって飲んでいる。
そんな日常の中の或る朝、寝ぼけた頭でボーッとテレビを見ていたら、白衣の人々がどっと雪崩れ込んで来た。
拉致された。
行き着けの病院に連れて行かれた。
病院の待合室には人がたくさんいて、その人たちの話によると、ここに呼ばれた者は、直ちに心臓を取り出して検査する必要があるとのことだった。
私は非常に焦って、せめて一本電話をかけさせてくれと看護師に頼んだが、聞き入れて貰えなかったので、人々の制止をくぐり抜けて公衆電話に駆け込んだ。
それから急いで職場に電話して、『今日病院立ち寄りで、出社遅くなります』と伝えたところで看護師に捕まった。
電話も済ませて、心残りは何もないはずなのに、手術台に上がると、なんだか妙に落ち着かない。
あー待って、と、思ううちにも手術は始まり、胸の上をメスが走るのを感じた。けれども部分麻酔が効いているのか、全く痛みはなかった。
出来れば気を失っていたかったけれど、全身麻酔なんかしたら心臓も止まってしまうに違いないと、自分を納得させた。
だから医者が私の心臓を取り出したのもはっきり見えた。
心臓を抜かれたのにちっとも息苦しくない。不思議に思ったけど、よく考えたら呼吸は肺がやってるので心臓は関係無いのか、と納得した。
取り出された私の心臓は、大きめの水餃子にしか見えなかった。餃子にしてはでかいが、心臓にしては小さい感じがした。
その水餃子のひだの部分に、担々麺のカスみたいなのがいっぱいくっついていた。
医者は『これが原因か...』と呟いて、看護師に、その担々麺のカスを洗い落とさせた。
それから手の中で心臓マッサージを始めた。私の餃子心臓はマッサージしているうちに、いくらか人間の心臓らしい形になった。
心臓が脈打ち出すと、医者は、切り開かれた胸ではなく、口に心臓を押し込んだ。最初はびっくりしたが、きっとこの方法なら糸で縫い合わせなくても、管類が自然に繋がるに違いないと、またもや自分を納得させた。
それから胸を綴じてもらい、『もう大丈夫ですよ』と言われたので安心して家に帰った。
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