2023年1月21日土曜日

どちらがどちらに変身したのかはよくわからなかった

大学か何かの一日体験入学に、なぜか弟と来ていた。
午前中は弟と別のプログラムを受けていて、昼休憩で落ち合うことにしていた。

待合室のようなところで弟を待ったが全然来ない。
あと5分待ってこなかったら一人で食堂に行こう...あと3分待ってこなかったら...
とやっているうちに時間が無くなってしまい、腹ペコのまま野外授業に向かった。

小高くなったところに枯れた芝生の原があって、そこが次の授業場所だった。
弟はもうそこに来ていて、私も枯草の上に腰を下ろした。
何百人もの体験入学者が行儀よく何列も何列も並んで座っていて、なんだかキノコの苗床みたいな雰囲気だった。

教官は、従順なキノコの株たちに、ショートストーリーを考えるという課題を出した。
私と弟はうんうんうなって考えた。
二人は考えているうちにマヂカルラブリーに変わっていた。
どちらがどちらに変身したのかはよくわからなかった。

マヂカルラブリーとなった二人は、とびきり面白いショートストーリーを考えだし、枯れ芝生からは移動して、会議室のようなところに移動した。
会議室には数人の教官たちが、面接官のような感じで会議テーブルを前に座っていて、野田クリスタルと村上は彼らに向かって自分たちの考えたストーリーを披露した。

話が終わると教官たちは、小声で少し話し合い、それから代表者が言った。

「あなたたちは合格です。合格なので発光します」

途端に会議室の電気が消えて真っ暗になり、野田クリスタルと村上が蓄光をためたほうろうのようにぼんやりと発光した。



2023年1月2日月曜日

札束

帰り道、歩きたい気分だったので駅には向かわず商店街を歩き続けた。
東京の街は、どこまでいっても途切れることなく商店街が続く。
すっかり暗くなって、気づけば家からずいぶん遠いところに来てしまったようだ。
徒歩ではどうやって帰ればよいのかわからなくなってしまったので、次に差し掛かったバス停からバスに乗ることにした。

バスの中はおじさんとおばさんでいっぱいで、和やかな雰囲気が流れていた。
席に座ると隣に座っていた知らないおじさんが話しかけてきた。
「俺お金いっぱいもってるからあげるよ」
手には鷲掴みの札束。
びびって必死に断る。押し戻すおじさんの手から一万円札が数枚舞い落ちるのが見えた。
札束おじさんは斜め前の席に座るおじさんにも札束を進めて断られていた。
そりゃ断るよな。怖すぎるよ、突然の札束は。

しばらくして、私はバスがどこに向かっているのかわからないことに気づいた。
札束を断っていた方のおじさんに、バスが自分の最寄り駅を経由するのかと尋ねようと思ったが、なんとなく質問が自分本位すぎる気がして、バスの行き先を尋ねるにとどめた。
行き先は知らない地名で、自身の居住地付近を経由するのかどうかはわからない。
スマホのマップアプリを開いてバスの現在地を確認すると、どうも渋谷を通るようだ。
その後の経路はわからないが、渋谷からなら電車での帰り方がわかるので、渋谷で降りることにした。
さきほどのおじさんにもう一度訪ねると、ポラン渋谷前で停まるとのことだったのでそこで降りることにした。
おじさんは先ほどの先ほどの札束おじさんをこっそり指さして、
「ロトで当たったらしいよ」
と小さな声で教えてくれた。
言われてみれば、札束おじさんのカバンにはビンゴのカードのようなものがのぞいていて、真ん中の一列がきれいに空いていた。
バスを降りる頃にはおじさんたちとすっかり打ち解けていて、なんだか別れがたく、名残惜しい気がした。

ポラン渋谷前で降りると渋谷駅の併設ビルからミュージシャンが出てくるところで出待ちの群衆が上を下への大騒ぎだった。
ミュージシャンは往年のパンクバンドで、女性ボーカルが寄せられたポリンキー型のファンレターをみんなの前でドラマチックに読み上げては地面にたたきつけていた。
砕けたポリンキーの黄色い粉がそこらに飛び散っていた。

バスから一緒に降りた人が、先ほどまで乗っていたバスの情っ客たちのほとんどが、明言を避ける必要のある団体とかかわりがあるのであって、例のロトも、その団体の若い衆に裏でいろいろさせた結果なのだという噂をしていた。
なんという内容の無い曖昧な噂なのだ。そう思いながら、心のどこかでは、やっぱりなと納得している自分もいるのだった。
なにがやっぱりなんだよ。