レンガで統一された建物群に粉雪が降りかかる。
柔らかい灯がともる静かな街並み。
やっぱ、こういうレンガ造りの建物は、雪が降る所じゃないと雰囲気出ないよね。オーセンティックっていうか。
こころのなかでそう呟いて、宿に戻った。
翌日は朝からヨガのアクティビティがあって、マイ(お)ちゃんか誰かと参加することになっていたのだけれど着ていける衣類がなかったので施設内の売店に寄った。観光宿泊施設の売店だから、基本的にはご当地キャラなどの印刷されたネタっぽい衣類しか置いていないだろうが、この際文句は言っていられない。
しかし実際に店に入ってみると、高円寺あたりの古着屋みたいな雰囲気の一角があって、オーガニックな布や染めの衣類がごっそりラックにかかっている。端から物色していくと、見覚えのあるものが手に触れた。
オレンジ色のタンクトップ。生地の端がほつれ加工になっていて、不必要なひもが襟ぐりや脇下にだらしなくぶら下がっている。これ、私この服持ってなかったっけ?不思議に思って店員さんの方を見ると、
「それは昨日お客様からお売りいただいた品です」
とにこやかに説明してくれた。
え、私、昨日売ったんだっけ?
うろたえた私があたふたしていると、声をかけてくれた店員さんは察してくれたようで、前日の売値の500円を戻してくれれば買取をなかったことにしてくれるとのことだった。
一度売ったものに対してそんなことしてもらうなんて非常に恥ずかしかったが、甘んじて申し出を受けることにし、500円払ってオレンジのタンクトップを取り戻した。
オレンジのタンクトップには1400円の値札が付いていて、心の中で、妥当な値付けだなあと他人事ながら思ったのであった。
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朝起きたら両親から、故郷の朝は寒気が緩み重たい雪が降っているとの報告が、白銀世界の動画とともに届いていた。それからツイッターを開いてタイムラインを見ていて、東京にも雪が少し降ったらしいことを知った。
朝から雪の話題がたくさん出たから、長い夢の中で、雪が降ったシーンの断片だけ忘れずに残っていたのだろうか。東京の雪は、昼間の日陰には少し残っていたが、日が暮れる前には跡形もなく消えてしまった。