2022年10月22日土曜日

テニス事務

テニスコートにいた。ハードコート。
とはいえ、通常のコンクリートよりは柔らかくて弾力がある。
古いコートだから、隅のほうには雨水がたまることもあるけれど、ここ最近はずっと曇りが続いていて手入れの必要もない。

元上司とストロークを続けている。
私たちは内勤の事務屋だ。
どういう仕組みかわからないけれども、私たちがボールを打つたびに、タスクが少しずつ片付いていく。
続けることが目的のストロークで、勝負を決するような、相手を陥れるような球は互いに打ち込むことがない。集中力を保つために、たまにスマッシュを打ち込んでみたり、スライスやカットをしてみたり、けれども基本的にはずっとドライブで、ストロークは続く。

取引先のA先生から、以前預けておいた例の品を返してもらわなければならない。
みると、高く張った緑色のフェンスに、A先生がへばりついている。
先生の後ろで、飲み水用の蛇口から噴き出た水が噴水のように飛び散ってキラキラ光っているのがみえた。

A先生から例のものを受けとる。どうしても必要だからというので渡しておいたものだったはずなのに、プラスチックでシーリングされたパッケージは開けられた形跡がない。ただ、パッケージの台紙部分のボール紙がよれよれになっている。

私はA先生に対してわいてくる怒りを口の中で飲み込んだ。
結局使わなかったんじゃないか。大切なものなのに、ただいたずらに古ぼけさせてしまった。だからあなたなんかに渡したくなかったんだ。

憤りであがった息を整えながらゆっくり歩いてコートに戻った。上司とのストロークを再開する。事務仕事は、淡々と続く。