2021年11月11日木曜日

浜辺でうつむく青年の音楽

フェス会場。

土手に設営されたステージでスタッフの女の子が泣いている。
「嫌です」
中野先生が返す。
「だめです。撤収」

嫌です、撤収、嫌です、撤収…押し問答は続く。
泣いて抵抗する女の子以外のスタッフは、みんなうつむいて手を動かしている。

どうして突然ステージをつぶす羽目になったのか。
誰かに尋ねなくてもなんとなく私にもあたりはついていて、目をそらしてその場を去った。

別のステージへオウガをみに。
膨らむ不安。

室内。講堂みたいなステージ
スタッフが、ボヘミアンラプソディーのときのクイーンみたいに真っ暗なステージに並んで深刻な顔でいろいろ説明している。説明の内容は、聞かなくても大体わかる。
ステージからスタッフが下りてきて、会場中の人々を指さしていく。
指をさされた人々が全体の20%くらい。その人々が退場させられ、残った客は前に詰めさせられた。

自分の見たいバンドは次の次だとスタッフに説明すると、入れ替え制ではないから通常通りそこに残ってみられると説明される。
スタッフに説明を受けている間に席をとられたのでPA横の横に座る。
PA卓には谷口さんがいて、馬場ちゃんの指示を受けている。
出てきたのは高木ブー。途中でブリージー・シュウォーツに変身したので度肝を抜かれた。最近よく聞いていた、プレスリーミーツベッドルームミュージックみたいな新譜。黄色っぽい背景の中、リーゼントでうつむくブリージーの顔ジャケが印象的な一枚。うつむく青年の一枚だけれど浜辺のリゾート感もある一枚。その新譜から何曲もやっている。まさかブリージーが高木ブーだったとは。隣にいた谷口さんに驚きを伝えたらめっちゃ笑われた。ブリージーに扮した高木ブーの後ろ姿はなんとなくポール・マッカートニーに似ていた。

ステージが終わってトイレに行った。
トイレ使用者の間で、整理券が使いまわされていたが、券がトランプだったりあいうえおだったり数字だったりバラバラで、どの順番かさっぱりわからない。
ラニさんもいて、あーだこーだ言っているうちにほかの人達がトイレに入っていったので慌てて列に並び直した。

フェスのタイムラインはおしていて、オウガ何時から?とラにさんにきいたら「今終わったところです」と言われて慌てた。いざトイレの順番になっても、オウガ終わっているかもと思うと焦って出ない。
しびれをきらして用をたさないままトイレを出た。
いそいで会場に向かう。
遠くから見えないルールが聴こえてきて絶望的な気持ちになった。

しかし、音が途切れて「もうやめやめ」と言う横柄なマイク音声が聴こえてきた。
演奏がとまる。
直ぐに騒がしい音楽に切り替わる。
なにごとかと会場に入ってみると、聞こえてきていたのはプロモーション映像の音で、バンドマンたちがスタジオでちょけている様子なのだった。

胸をなでおろし、ライブが始まるのを待っているところで目が覚めた。
目が覚めてからしばらくして、ブリージー・シュウォーツなんてミュージシャン、現実にはいないことに気付いた。耳にはつま弾かれるウクレレの音と、彼の、つぶやきのような歌声が残っているのに。