私が手に持っていたイラストの描かれた紙を渡すと、それも一緒に売ってくれる。
イラスト用紙は飛ぶように売れた。
カップルは移動しながらモノを売っていたので、私もついて行った。
各段差が数メートルありそうな階段を降りた。
一番下の段は建物の2階くらいの高さだった。
私は持っていたギターを先に下に落とした。そうするしか方法は無いし、ハードケースに入っているから大丈夫…、と自分に言い聞かせたが、楽器が下に落ちた時、ズーンと低めの弦の音が響いて心が痛んだ。ハードケースの上に暗い色の虹がかかっているのが見えた。ギターの悲鳴は暗い虹色なのだった。
ギターの次に、私も思い切ってジャンプした。
着地する時、左足をついて膝のバネで衝撃を吸収し、右足は横にグッと伸ばしてバランスをとった。とっさのことだったし無意識にとった姿勢だった。
高いところから飛び降りる時って、本当にマトリックスみたいなポーズとっちゃうもんなんだなあ…、と感心した。
基地のようなところに戻ると、カップルは私に分前をくれるといいだした。
私はうろたえた。
私が渡していたイラストは、自分で描いたものではなくて、ケイちゃんが描いたものだったからだ。カップルはカップルで、私に渡す分け前をどれくらいにするかでもめ始めた。
「私はこれでいいや」
そう言って、テーブルに置いてあったチョコレート一粒口にいれ、そそくさとその場を後にした。
先ほど降りた階段をもう一度上るのは辛い。というか無理。
改めて、下から見上げてみると、それは学校の校庭かなにかに設営された階段で、仕組みはわからないが一段一段が宙に浮いているように見えた。上り切ったところは公道に繋がっている。
どうしようかとあたりを見回すと、筧利夫が通りすがった。彼に楽な道を尋ねると、あるよと言ってつれてってくれる。
途中でワカちゃんといちさんに合流した。
二人もずっと一緒についてきてくれるのかと思ったが、ワカちゃんは途中で自転車にのって帰ってしまた。そうかここはワカちゃんの地元だったか。自転車で踏切を渡るワカちゃんの後ろ姿を眺めながらそんなことを思った。
二人もずっと一緒についてきてくれるのかと思ったが、ワカちゃんは途中で自転車にのって帰ってしまた。そうかここはワカちゃんの地元だったか。自転車で踏切を渡るワカちゃんの後ろ姿を眺めながらそんなことを思った。
小さな鳥居の前を通った。
まわりは草木が雑然と茂っており、石段は朽ちて崩れかけている。奥にあるのは祠だろうか。
いちさんは神社にお参りしたそうだったけど、筧利夫がどんどん先に進んでいくので、いちさんを急がせて彼の後を追った。
いちさんは神社にお参りしたそうだったけど、筧利夫がどんどん先に進んでいくので、いちさんを急がせて彼の後を追った。
陸橋を渡ったところに老舗っぽい感じの酒屋があり、ようやく筧利夫の足が止まった。
いちさんは多少いけるくちなので、筧利夫と酒談義を始めた。「時の均衡」だか「時の平衡」だかという三部作ウィスキーがこの酒屋の名物らしい。時の天秤だったかな。…時の釣り鐘?
いちさんは多少いけるくちなので、筧利夫と酒談義を始めた。「時の均衡」だか「時の平衡」だかという三部作ウィスキーがこの酒屋の名物らしい。時の天秤だったかな。…時の釣り鐘?
とにかくその、時のなんちゃらを私は眺めた。
四角い木枠にはまった3つの瓶は、どれもユニークな形をしていた。
一つは丸底フラスコみたい、一つは把手がついている、一つは船のような形。
それぞれの瓶に入った液体が、斜陽に透けてゆらゆらと光っていた。