誰だったか忘れてしまったけど、外国人の友達。背の高い。
私たちは賛同するともなく彼についていった。
森の縁にはフェンスが張ってあって、兵士が歩いているのが見えた。
あの国境を誤って越えてしまったら撃ち殺されるのでは?
懸念をいいだしっぺに伝えても、国境を越えなければ大丈夫だという。
けれども私は心配だった。
もし、森の中でフェンスが途切れて国境がわからなくなっていたら?
もし知らずのうちに、国境を越えてしまっていたら?
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1983のライブ。
一曲終わらないうちに演奏が止まってしまった。
帰っていくメンバーに追いすがる。
「どうしたんですか?なにかあったのですか?」
ヴォーカルの関さんが何でもないですよと笑った。
とても痩せていて、ますます不安が募る。
一緒にいた松村さんは何も言わない。
松村さんも三太さんも、フェス会場内の落語ステージに入っていってしまった。
私はみんなを追うのをあきらめて、別の会場に向かった。
ドイツ人か、ポーランド人か、北欧諸国のどこかか、十数人の人々がそれぞれ機材をもって会場の中心に座った。機材を円状に組み上げていく。モジューラーシンセのようなものだろうか。音が出始める。
観客は、十数人の円の周りをグルグルと回って音を鑑賞する。
グルグルと回ると、移動するたびに聴こえる音が変わっていく。モスキート音みたいな音や、可聴域を超えるぎりぎりの音、音は聞こえず空間が歪んで見える低音…。
音圧が大きすぎて、目の前で発される音しか聞こえない。
これは合奏と言えるものなのだろうか。
円の対角線上、観客の中に松村さんがいるのが見えた。