2013年5月31日金曜日

乳飲み子巫女の預言

上司数ヵ月ぶりに出社した。
たった数ヵ月の不在だったのに、もう何年もたった気がする。

休職のきっかけは過労だったから、部下の私たちは、彼が働きすぎないよう、躍起になっていた。
しかし、私たちの尽力むなしく、上司は復帰後既に働きすぎだった。
ちょっと目をはなした隙に働かれてしまう。

しかも、復帰した上司は乳飲み子を抱えていた。
社員たちで代わる代わる面倒をみる。
私は昔弟妹たちの面倒をみていた経験をひけらかして、ミルクをつくってあげると申し出た。
ところがお湯がすぐ冷めて水になってしまったり、分量を間違えたりで、さっぱり上手く行かない。得意げに申し出ただけに、ばつの悪いことこの上ない。

夜は会社の親睦会。
白身の魚がいっぱいあったけど、ヤマナカさんが、去年、その魚を大量に食べて食中毒になったという話をするので、食べるのは止めた。

タケダくんがパーティの飾り付けを用意していて、模造紙に拡大プリントしたCDのジャケットに目が止まった。<br />
それは自分が子供の頃流行った、芸人が歌って出したCDのジャケットだった。
めちゃくちゃ懐かしい。
思わず「xxxだ!」と呟くと、先輩社員が「あれ、こんなの知ってるの?」と言ってきたので俄然盛り上がった。タケダくんはそのCDのことは名前を聞いたことある程度らしく、たまたま選んだだけみたいだった。

赤ちゃんのなきごえがした。
反射的に立ち上がってしまったけど、さっき恥をかいたばかりなのもあって、そばにいる人たちがどうにかしてくれるだろうと思い、座り直した。
けれども、いてもたってもいられなくなって、赤ちゃんをあやしにいった。
だっこしてあやすと、赤ちゃんは、まだ乳飲み子の癖に、甘えた感じで言葉をくちにした。

「マナちゃん」
赤ちゃんはそう繰り返していた。
私ではなくマナにだっこされたいという意味なのか。
なんか腹立つ。
しかし赤ちゃんに怒っても仕方ないのでマナを探した。

すると、コンビニにアイスの冷凍庫みたいなもののまわりに女子が群がっていた。
なにか、不穏な空気だ。
冷凍庫から、剥き出しの腕が突き出ている...

「マナちゃん。」
赤ちゃんが呟く。
まさか...

背筋がぞくっとして、私は心のなかでマナを呼びながら冷凍庫にかけよった。
やにわに、冷凍庫からはみ出た腕が動いた。
そして、呆然と立ち尽くす私たちの前で、裸のマナが、冷凍庫から這い出した。

マナは、糠床につかっていた大根みたいにしらっちゃけて、ぬかまみれで、寝起きだった。